胆石症とは、肝臓で作られた胆汁中の成分が結晶化し、結石になる病気です。
日本では、食生活の変化や高齢化により胆石症が増えており、総人口の約10%が胆石を有していると言われています。男性より女性に、40歳以上、肥満体型、多産女性に多い、と習いました。しかし、最近全国調査の結果では男性の比率が高いようです。発生部位により、胆のう結石、総胆管結石、肝内結石があります(図1)。
最も多く胆石ができる場所は、胆のうです。
胆のうは肝臓で作られた胆汁を一時的に貯蔵します。十二指腸に入った食物の刺激により胆のうが収縮し、胆汁が排出されます。特に油っこいものを食べた後は強く収縮します。カロリー・脂質を摂り過ぎると胆汁中でコレステロールが固まり、少しずつ大きくなり、結石になります。
胆のう結石は、肥満、経口避妊薬の使用、長時間の絶食や極端な体重減少(ダイエット)との関連が指摘されています。肥満になると、発症率は男性で2倍、女性で2.5倍に増加すると報告されています。また、高血圧、糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病の合併率が高いようです。
胆のう結石の多く(約7割)は無症状です。結石が胆のうの出口に引っかかり、右季肋部痛や心窩部痛、吐き気や嘔吐が起こることがあります。結石が胆嚢の出口につまり、胆汁の流れが阻害されると、細菌感染が起こり、胆のう炎を起こします。胆のう炎を合併すると発熱することもあります。
診断のためにはまず、腹部超音波(エコー)検査を行います。胆石の特徴的な高エコー像と音響陰影が見られます(図2)。
“胃が痛い”と受診され、検査の結果、胆のう結石と診断された方もおられます。
無症状の胆のう結石では、薬は処方せずに経過観察とすることが多いです。痛みがなく、コレステロール主体の結石の場合には、内服薬で結石を溶かすこともあります。痛みがある場合は、まず鎮痛剤を使いますが、腹腔鏡下胆囊摘出術での手術療法が主流となっています。
胆のう結石は、徐々に数や大きさが増加することもあれば、長期間変化しないこともあります。しかし、経過中に胆のう癌が発見されることがあり、注意が必要です。無症状の場合でも、定期的にエコー検査で観察することをお勧めします。
発作の誘因である脂肪分の多い食事は控えましょう。肥満の方はゆっくり減量して行きましょう。
総胆管の正常径は約6㎜以下です。総胆管に結石がはまり込むと心窩部・右季部痛が出現することが多いです。血液検査でAST、ALT、γ-GTP、ALP、ビリルビンなど、肝・胆道系酵素の異常が見られると総胆管結石が疑われます。結石により胆管が閉塞し、感染を起こすと急性胆管炎を合併し、悪寒を伴う発熱、黄疸が出現します。意識障害を伴うこともあります。また、総胆管の出口の十二指腸ファーター乳頭に結石がはまり込むと急性膵炎を発症することがあります。急性胆管炎や急性膵炎が生じた場合、緊急入院・治療が必要となります。
まず、腹部エコー検査で診断します。ただし、エコー検査での総胆管結石の描出率は60%程度ですので、MRIによる膵胆管描出法(MRCP)やCT検査も併用することが多いです。
肝内結石とは肝臓内の胆管に生じた結石です。症状は総胆管結石と同様に心窩部・右季肋部痛、発熱が出現することがあります。発がんとの関係が指摘されています。まずは腹部エコー検査や血液検査を行い、診断します。
(図1)
(図2)
参考文献
イヤーノート2016 内科・外科編 メディックメディア.
消化器疾患診療のすべて 日本医師会雑誌141(2), 2012.
肥満と消化器疾患 第2版 日本消化器病学会編, 2015.
胆石症診療ガイドライン2021第3版 日本消化器病学会編, 2021.
今日の診療プレミアム Vol.30,医学書院, 2020.